人形師紹介

市松人形は、江戸時代中期の人気歌舞伎役者・佐野川市松を模した男の人形として誕生し、さらに女人形の出現でたちまち全国に広まりました。 

その人気の秘密は、この人形が単に飾って眺めるだけの人形ではなく、子供たちが抱いたり、おんぶしたり、手製の着物を着せ替えたりして慈しむ(遊び人形)として愛されたからだと思います。

時代とともに面立ちや姿は微妙に変わっても、この市松人形の原点-人と人形の心が通う「ふれあい」の温もりは少しも変わりません。

そして、私も一人の市松人形師として、そんな人形を一体でも多くつくり上げたいと念じながら毎日仕事場に座ります。

幾度も数え切れぬ手づくりの工程はすべておろそかにできませんが、とりわけ心魂を打ち込むのは「顔」づくりです。
人間の最も愛らしい年頃の無垢な命をどう作り出すか―人形師の苦心も誇りも、そこに凝縮します。

人形たちの顔をご覧になって、ご自分のお気持ちと重なる何かを発見していただけましたら、人形師としてこんな喜びはありません。

そして、お求めくださいましたら、ぜひ、時折優しく抱いてやってくださいますよう。
そのとき、人形もとても嬉しいのです。

かぶきや市松人形師 松乾斎東光